偶然生きてる

池田シン

2024年01月25日 19:11

今まで生きてきた中で、
「おれ、ここで死ぬかも知れないな」
と思った事が何回かある。
最初に死を意識したのは多分21歳くらいの時。登山歴一年にして無謀にも5月連休、白馬乗鞍から針の木岳まで単独縦走した。
不帰(かえらず)の嶮。夏場なら鎮とかハシゴがかかってるんだけど、この季節、それらは雪に埋もれてて、ただ急傾斜の雪壁だった(どのくらいの傾斜だったのだろう?当時のオレには70°~80°くらいに感じられた)
人が登った足跡が穴ボコになって上に続いていた。僅か4~5mくらいの登りだったけど、ここは本来複数人のパーティでロープで確保しながら越えるところだろう。だけどオレは独りだしロープも持っていない。
足元の雪が崩れたら一気に数百メートル滑落。同違い無く死ぬ。それでも何故か、引き返そうとは思わなかった。雪壁に突き刺したピッケルは頼りなかった。一歩一歩、祈る様に登った。足元の雪が崩れなかったのは、単なる偶然としか思えなかった。オレが今、生きているのも、そんな偶然の積み重ねでしかない様に思える。

明日、62歳になる。

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